インタビュー、その0 「 石川憲彦さんって、どんなひと? 」

 

リベルタ学舎の「心の父」です。
リベルタ学舎の「心の父」です。

 

 

小児科医から精神科医に、という珍しい経歴には理由がある。

東大病院で赤ちゃんの頃からみてきた、慢性疾患や障害のあるこどもたち。
その子たちが成長すると、みてくれる医療機関がない。
こどもたちとかかわり続けられる場を求めて、精神科に移った。

 

「私たちは、医療をやってよかったのか」
という問いが、常に根底にある。

 

こどもの頃に行った予防接種や抗生物質の投与などの医療は、
大人になってどういう影響を与えるのか。

小児科だけにいてはわからないから、
精神科で引き続きフォローすることにした。

 

また小児科医時代には、20年前のカルテをもとに、
こどもたちの「その後」の追跡調査を実施。
親たちの複雑な思いを知ることになった。

 

あるいは、診察室だけではわからないと、
障害児、親、看護師、学校の先生、学生ボランティアみんな一緒に、
毎年、海や山へキャンプに飛び出した。

 

 

薬についても、スタンスは変わらない。
「私たちは投薬して良いのか?」

 

15歳までのこどもの脳は発達段階にあり、
しかもその発達は個人差が非常に大きい。
そして、脳は細胞がほとんど入れ替わらない。

石川先生がたどり着いたのは、
こどもには、命にかかわらない限り投薬をしないという方針だった。

 

基本的に薬を出さないクリニックは、全国から圧倒的な支持を受け、
4年待ちになることも少なくない。

 

 

 

”医学や治療は、わからないことが多すぎる”

 

 

石川憲彦さんを今日のような「石川先生」にした大きな存在が、
医学部助手時代に主治医として出会った「タックン」だった。

 

水頭症のその子は、仮死状態で誕生。
治療も放棄されるほど重度の障害で、
両親が嬉しげに「笑うようになった」というのは医師から見ると痙攣、
「伸びをする」のも、麻痺によるそっくり返りでしかない。

 

そんなタックンが2歳のとき、診察室で、「にこっと笑った」。
病理上の「痙攣」はたしかに、親との日常のなかで、
意思表示のコミュニケーションツールになっていた。

それは、専門家は誰ひとりとして予想すらできなかったことだった。

 

やがてタックンは、言葉も解し、発音もし、
夜遅くまで遊びに出かけて親を心配させるような小学生へと育っていく。

「医学」「治療」という部分だけで見ていては、わからないことがある。

しかもタックンの「生きる」を切り開いていったのは、
専門家ではなく、親や周囲のこどもたちだった……。

 

この驚きと、専門家が診る狭い「病理」を超えた、
広々とした「生理」のエネルギーへの明るい実感が、
石川先生の原点にある。

 

 

 

これで飛んでいかない悩みは、生きるか死ぬか

 

 

きょうはもう、ここまでに二つ、精神医学の大事な原則を話しました。
まったく本筋と違うことで自分をごまかす。

さらにそれを正当化するために儀式をする。

この二つで、おおよその悩みは飛んでいくわけです。
(中略)
「じゃ、これで今日の話は終わります」
と言って引き上げてもいいくらい話しました。

 

 

ある日、読み始めた薄いブックレットに、こう書いてありました。

それが、私と著者・石川憲彦さんとの「出会い」。
本文に入って、まだ4ページ目です。
いっぺんで大好きになりました。

 

タイトルに惹かれて購入したこの『子育ての精神医学』という小さな本が、
スペインでの孤独な育児を、どれだけ楽にしてくれたか、わかりません。

 

 

「子育ての精神医学」―思い込みから楽になるために
「子育ての精神医学」―思い込みから自由になるために

『子育ての精神医学-思い込みから自由になるために』
(ジャパンマシニスト社)

 

 

2012年の夏、育児書を翻訳した縁で、
出版元のジャパンマシニスト社の会議にお招きいただきました。

同社の看板雑誌で、広告を載せない育児誌として根強いファンが多い、
「ちいさい・おおきい よわい・つよい」等の編集会議。
お隣の席が、同誌の編集委員をつとめる石川憲彦先生でした。

 

会議の席で、書籍からさらに進んだ石川先生の考えに触れて、
強く共感し、あらためて大ファンになりました。

しかもおしゃべりするうち、石川先生のご出身が神戸、
それも私の以前の住居のすぐ近くという偶然も発覚。まあ!

 

 

 

「発達障害」に感じる引っかかりって、なんなのでしょう?

 

 

いま話題の、発達障害。

外国に十年いて帰国したら突如現れていたこの言葉に、
すごく「引っかかり」を感じて、しばらく前からいろいろ調べていました。

 

それが、今回の「クロマニョン基礎講座」でした。

 

後日、発達障害をテーマとする著作もある石川先生に見ていただくと、
「よくまとめましたね」とのこと。
思い切ってインタビューを申し込むと、
「喜んで」と快諾してくださいました。

 

 

 

『発達障害という希望』
『発達障害という希望―診断名にとらわれない新しい生き方』

『発達障害という希望』(石川憲彦、高岡健/雲母書房)

 

 

このインタビューの翌週には、
年長組の娘の就学時健康診査が控えていました。
そこで、普通教育の対象になるか、特別支援教育の対象になるかが
判定されることを、知ったばかりです。

 

いったいそこで、娘は何を判定されるのでしょう?

いったい私は何に、最愛の娘を差し出そうとしているのでしょう?

 

私たちは、何かとても大切なことを考えるのを、
忘れたりサボったりしている気がします。

 

石川先生、「発達障害ブーム」に感じる引っかかり、
言うなら「怖さ」は、
いったいどこから来るのでしょう。

 

日本は、私たちは、いったいどこへ行こうとしているのでしょうか。

 

 

(インタビューに続きます)

 

 

※12/6(土) 14:30~ 石川憲彦先生とお話会
「こどもとの時間が楽しくなる3つのヒント」

イヤイヤ期、反抗期、思春期。登校拒否、発達障害、引きこもり……。

「こどもといるのがしんどい」と思うとき、こどもだって「親といるのがしんどい」と思っているかもしれません。

児童精神科医の石川憲彦さんは、生きづらさを抱えるこどもたちと向かいあって40年。

そこから見えてきた、親子の関係をつなぎなおす3つのヒントとは。

定員20名程度。畳のうえでのんびり、お話し会です。お子さま連れ、大歓迎!

<詳細>http://ow.ly/EkIYL 

 

 

 

「私たちは、医療をやってよかったのか」―児童精神科医・石川憲彦さんインタビュー(0)

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