昨日、ムスメが通う小学校で音楽会があった。運動会と同じ、父兄が観に行くスタイル。
出かける前、FacebookとTwitterにこういう投稿をあげた。
今日はムスメの小学校の音楽会。業者が撮影したDVDと写真を販売するので、当日は父兄によるビデオカメラやデジタルカメラでの撮影全面禁止とのこと。DVDはたしか約3000円で写真は1枚150円くらい。うーむ、学校は何を優先させたいのだ?
帰宅して見ると、いっぱい書き込みがあった。
もちろん、私のいちばんうがった見方は、「おい、学校は業者と結託してるのか!」だ。
あれは入学して最初の授業参観の日のこと。公開授業は5時間目。
その日は体育があったので、みんな、まっさらな体操服を来ていた(神戸の小学校では、体育がある日は朝から体操服で登校して、そのまま下校する)。
給食は、カレーだった。
まだ箸使いのおぼつかないこどもたちの体操服がどういう状態だったか、ご想像いただけると思う。
そしてその日、大々的に、体操服の追加販売が行われていた……。
ここで、「おいおい、体操服の業者がカレールー寄贈したんちゃうん?」と、フリーメーソン陰謀説みたいなことを言ってしまうのが、私だ。
「撮影を優先するマナーの悪い父兄が多いので、生徒の集中力を高めるため、撮影禁止にせざるをえない。悪いのは大人」
そういう意見があった。それもわかる。
じつは、一昨年まで行っていた公立の保育園でも、同じ理由で、観覧席からの撮影は禁止されていた。
が、そのかわり、いちばん後ろの列と、両サイドの列を、撮影専用エリアとして開放していた。
そのいちばん良いところに業者が入って、撮影していた。
どうも、「禁止」という措置に、カチンと来るらしい。
学校と父兄とのあいだには、力関係がある(モンスターペアレンツなどもいて、学校がすごく大変なのもわかるけど)。
「禁止」と言われると、基本的に父兄は、従わざるを得ない。いわんや、児童をや。
このあたり、保育園では、まだ「対話」が成立している。
それで、「プロの撮影もあるし、こどもたちにも集中してほしいし、できればご父兄にも撮影に気を取られるんじゃなくてしっかりとその目でこどもたちの姿を見てほしい」という状況や動機が同じでも、「端に撮影エリアを設ける」という、柔軟な対応ができる。
それが小学校になった途端、ざっくり「はい、全面禁止」となる。
たぶん、人数が多いからだろう。
ムスメが通っている小学校は、全校生徒が900人台。
全体が2班に分かれて前半・後半で発表するので、1回に約450人分の父兄が押し寄せる。
おそらくひとりひとりと対話する余力はないから、「禁止」という措置が出る。
集団を管理するために、対話ではなく、一方的な通達が選ばれる。
小学校でも保育園でも、「親御さんにしっかり見て欲しい」という理念は同じだろう。
それで一方の保育園では撮影禁止になっていないのだから、それは、学校側の態勢、おそらくは状況(人数)による差ということである。
児童精神科医の石川憲彦さんが言われていた。
「本当にそれが病気なら、あらゆる場所で同じ症状が出るはず。
もし学校など、ある場所だけでその症状が出るならば、医者としては、それは本人ではなくその場所の方に問題があると判断します」
この「病気」を「理念」、「症状」を「対応」と読み替えてもらえれば、だいたいいまの私の考えていることだ。
「そりゃまあ撮影したいきもちもわかりますが、この人数だと収拾つきませんし、過去にこんなひどいこともあったので、一律禁止とさせてもらいます」
そういうメッセージが伝われば、そうか、仕方ないな、と思っただろう。
それを、
「撮影なら業者がよりクオリティ高くするし、生徒にとっても集中力が高まるし、お母さんもたまには撮影を忘れて鑑賞した方が良いと思うから」
と、まるで「あなたのために」というかたちで伝えられるのが、私には耐えられない。
たとえば、ラーメン屋に入って、そこにはチャーシューとか煮卵が一切なくて、その説明に「現代人はただでさえタンパク質摂取過多になっているのに、さらに炭水化物抜きダイエットなどが流行って身体に過剰な負担をかけがちです。当店では純粋に『炭水化物と塩分を含んだ汁』という本来のラーメンをお客様に楽しんでいただくため、タンパク質は全面禁止とさせていただいております。ただし、動物性タンパク質ではない隣の店の精進チャーシューにつきましては1枚500円で提供します」と書いてあったとしたら。
……ま、たまには良いか。
そう思えるのは、それが自分で選んで入れるラーメン屋だからだろう。お昼はそこでしか食べられないとしたら、やっぱり嫌だな。
「今日はチャーシューやめとくか」とか「まあ、今日は撮影やめとくか」と決定するのは、個人の勝手だ。
実は私は今年の運動会では一切撮影をしていないのだけど、それは裸眼で見たかったからではなく、一眼レフさげて立ちっぱなしなのが腰痛で耐えられなかったからだ。
(近眼で乱視なので、とくに屋内はズーム効かせた画面で見れた方が、よっぽど見やすい)
「あなたのためにチャーシューだしません」とか「あなたのために撮影を禁止します」というのは、余計……というか、もしそれを言ったのが多く権力をもつ方だったら(子供に対する親とかね)、横暴だ。
実際に、チャーシューがなくてよかったと思う人がいる、撮影しなくてよかったと思う人がいる、というのとは、別の問題で。
まあそんなことを思いながら音楽会へ行き、いちばん驚いたのは、満座の父兄がみなちゃんと言いつけを守って誰も撮影していなかったことだ。
これ、スペインなら、言うこと聞かないひとたぶん多いぞ。
日本人は偉いなあ。