はじめてお目にかかったのは、リベルタ学舎が住吉校舎から撤収するときだった。
ご存知のように(「うまい話にゃウラがある」)、リベルタ学舎はうようよ曲折があって、いったん居場所をなくすことを選んだ。私たちは教室にしきつめた良い香りの畳が大大大好きで、それを「適当に切ればいい」などと大家さん予定の方にあっさり言われたのも、「こんな、思いをわかってくれないところに行っちゃダメだ」と判断する大きな理由となった。
この畳さえあれば、どこでも、リベルタ学舎になる。そんな畳をつくってくれたのが、神戸の前田畳製作所だった。
撤収の経緯を知った前田畳製作所の社長さんから、「畳はどうされますか?」と問い合わせが入った。そのときはまだ、面識はなかった。「自宅になんとか保管をしようかと」と答えると、「差し出がましいですが、うちで預からせていただきましょうか?」と言ってくださった。
そして、撤収の日、前田社長自ら、リベルタ学舎まで足を運んでくださった。汗だくで、雨の中、畳を次々とトラックに運び込む。そして、撤収も保管も、無料でいいと言ってくださった。「湯川さんのように、これだけ畳を愛してくださっている方から、お金は頂戴できません」 しかも引っ越し蕎麦まで、スタッフとご馳走になった。涙が出た。
前田畳製作所は、会社となってから、来年で創業50年を迎える。三木の工場で、畳をつくっている。いまの前田敏康社長は、二代目というか三代目というか。くりっとした目がチャームポイントで、汗っかきで、「歩く誠実」という風情。
「神戸モトマチ大学」という、地元有志による勉強会でも、Sparks!チーム・サブリーダーとしてかかわっている。神戸の心ある若手事業者なら、きっと、「誰かのためにまた汗だくで、でもなぜか輝くような笑顔で走り回っている前田社長」を、どこかで見かけているはずだ。
そして現在取り組んでいるのが、「5日で5000枚の約束。/災害時の畳店プロジェクト」。災害時に、全国の畳店から、避難所に新しい畳を無料で届けよう! というもの。前田さんが思い立ち、いま全国を飛び回って、有志を募っている。「なんでそんなことを」「行政に任せれば」、けっこう怒られたりしながら、へこたれずに、対話しつづけている。それで現在、5082枚の「約束」を得た。
熱い。そんな前田さんが、こんど、西宮に支店を出すことになった。友人が営んでいたお店を引き受けるかたち。畳も作っていた場所で、織機なども現役で稼働している。(明日、体験できますよ~)
「一緒にこの場をつくっていただけませんか?」 前田さんが、リベルタ学舎に、声をかけてくれた。もちろん、私たちがゲリラということを知ってのことだ。でもそれだけでない。「生きる力を愉快に高める」というリベルタ学舎の理念に、前田さんは心から共感してくださっている。
思えば、「ていねいに暮らすを、たたみから。」という前田畳製作所の理念に共感して、前田さんの畳を使って1年。その畳の素晴らしさ、毎日スタッフやお客様たちをどれだけリラックスさせ笑顔にしてくれるのか、どれだけ赤ちゃんがハイハイしたり舐めたりするのをお母さんが楽しそうに見ているか、どれだけこどもたちがきゃあきゃあ走り回るか、私たちはじゅうぶんに知っている。1年間の、モノを通した、豊かな対話があって生まれた関係だと、思っている。
そんな、これからつくる、前田畳製作所・西宮支店のキックオフイベントが、今週土曜に行われる、岡田慎一郎さんの「あたりまえのカラダの使い方」講習会。ほんとうは、「まだリフォームもしていないのに、お客様に失礼では」と躊躇する前田社長を、「ぜひ、前田畳さんの場所で、したいんです」と、口説いちゃった。
岡田先生とワークショップの内容を詰めてるうち、昔の日本人の身体運用、とくに股関節の可動域の広さについて、畳の生活がどれだけ重要だったかという点で、盛り上がった。むかしのひとは、できていた。いまのひとも、できる。生活に、「畳」や「しゃがむ」などを取り入れるだけで。日本人の生活には、その知恵があった。
もうひとつの「共通点」がある。岡田先生のテーマは、怪我や故障や負担なく、ごきげんに日常生活を送ることができる身体運用にある。これは、「ていねいな暮らしを、たたみから。」と、ほんとうによく似ている。そこにある身体、畳、暮らしを、ていねいに扱う。私たちが現代生活で忘れてきたそのことこそが、「生きる力」を取り戻す、ささやかだけど、ひょっとしたら最大の、シフトチェンジだ。
もちろんそれは、リベルタ学舎が、いちばん届けたいことでもある。
というわけで、まだ工事もはじまっていない前田畳製作所西宮支店で、今回のワークショップは行われます。ワークショップ用に畳を30枚、さらにその後のお茶会用のスペースに十数枚、ちょうどいまごろ、また前田さんが汗を流して、設置してくださっています。
ワークショップにつかうパイプ椅子は、村上工務店さんが貸してくださることになった。市内の大手工務店の代表をつとめつつ、神戸の街の知性をつなぐ神戸モトマチ大学を主催(さきほど少し話した、前田さんが手伝っている勉強会です)。多忙ななか、本気で、神戸のこれからを考え、しっかりと担っている、すごく素敵な方。前田社長とは長年の仕事も通して、深い信頼関係を築かれている。村上さん、いつも本当にありがとうございます!
そして、お茶菓子を用意してくれるのは、住吉のオーガニックフレンチ「ビストロヒマワリ」。前回、甲野善紀先生がおいでになったときにもケータリングをお願いし、本当に素晴らしいお料理を届けてくださった。身体と食の関係とその喜びを、一心に考えているオーナー夫妻が、「張り切って」この日のためのお菓子をつくってくださる。もう、最高!
こんな方々に支えられての、明日の講習会です。お客様も、びっくりするくらい素敵な方ばかり。もしご縁あったら、ぜひどうぞ。あと10人くらい分は、お菓子もあります♡
<詳細>
日 時: 2014年7月5日(土) 13時半~15時頃 (終了後プチお茶会)
場 所: 前田畳製作所 西宮支店 (阪急西宮北口徒歩7分。西宮市北口町18-5)
参加費: おひとり2.500円 (同伴のお子様 1,500円)
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お問い合わせ: web@libertad-school.com